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桜の時節が過ぎると、人々の華やいだ心は、しばし小休止だ。
本町・南御堂の西側に座間神社がある。その座摩神社の境内に陶器神社があって、その陶器神社の本殿前を通った際、甘い感じのとても良い香りがした。
香りのよい花と言えば、金木犀(きんもくせい)以外思い浮かばない私だったが、今日、偶然にも、金木犀を上回る花を見つけた。香りの源は「招霊(おがたま)の木」と言う。
招霊の木の香りは金木犀ほど強くはないけれども、金木犀より奥ゆかしい。神前にそなえ、神霊を迎えることからこのような名前で呼ばれるようだが、なるほどと納得する馥郁な香りがする。
しはらくの間、招霊の木を眺めているうちに、不意に、私の頭の中に、20年も前のほろ苦い記憶がよみがえってきた。
それは、京都・妙心寺の境内にある東林院の沙羅双樹の花を見に行ったことである。
もちろん、かの有名な平家物語の冒頭の句に惹かれて東林院へ行ったのであるが、この花を見るためには、確か、抹茶付きの馬鹿高い入場料を支払わなければならなかったように記憶している。それはまだしも、木の根元のあたりに、明らかに人為的に置いたと思われる白い花が5、6輪落ちており、その状況を僧侶が物語に合わせてもっともらしく解説を始めた時には、流石に興醒めして一歩身を引いた。寺院のすさまじい商魂を感じてしまい、以後沙羅双樹に対する魅力も興味も失せたままでいた。
当時の雰囲気を想えば、その沙羅双樹は、現在、恐らく拝見料に消費税をも上乗せしてがんばっているだろう。
それはともかく、ここの陶器神社の招霊の木に出合って、同じ境内樹として、あの沙羅双樹にも親しみと愛着が湧いてきた。
今、目を閉じて沙羅双樹に合掌! (平成19年4月13日) |